厨食CLUB / 師父亮ESSAY / 第5回 失敗談

師父亮ESSAY

失敗談

メニュー


研修などで持って帰ってきたメニュー

初めて香港に行った時、最初の3、4日間は香港の身元引受人であるご夫婦があちこち食事に連れて行ってくれたのですが、何を食べたいかリクエストできるような立場ではなかったので、選んでいただいたものを食べていました。ですから同僚と二人で食事に行っても、何を注文すれば良いのかさっぱりわかりません。
  ある時、二人で入ったお店ですごく立派なメニューが出てきました。よし、読めないけど字面がカッコイイからこれにしようって注文した料理が、出てきてみると何のことはない、しいたけのスープでした。それ以来、ボーイさんに他のテーブルで出てきた料理をさして、「これが食べたい」とういように注文していました。

メニューといえば、私たちはレストランで食事をするときは必ず、お店のメニューをこっそり持って帰っていました。もちろん今はしませんけど。香港研修当時、お世話になっていた方と食事をする機会がありまして、その時ついメニューをバッグに入れてしまったんです。当然なんですけど、すごく怒られました。なぜメニューが欲しかったかというと、メニューにはそこの会社、お店の方針や考え方がすべて入っているからです。その頃はメニューの意味なんてわかりませんでしたが、日本に帰って報告書を提出するときに行ったお店のメニューを添付すると大変喜ばれましたね。

調味料


研修先の調味料棚

お客さんに出す料理の調味料を間違う事もありました。仕込みの段階で調味料を調合しますが、いろんな調味料をそれぞれ量っておいて順番に作って行きますから、うっかり隣のものと間違えたり入れ足りなかったり。足りないのはいいんですけど、入れすぎると大変ですよね、作り直しですから。
 それから材料を知らないので「これ産粉だよ」って言われてわからない、「産粉」と書いてもらってもわからない、ということもありました。産粉は片栗粉、発粉はベーキングパウダー、泡打粉とも言います。玉米粉はコンスターチ、しかし高級なコーンスターチになると「鷹栗粉」と名称が変わってしまいます。この名前では日本にありませんでしたから香港でいっぱい買って帰ってきます。さあ作ろうというときになって、あれ?これコーンスターチ?って気付くんです。缶の裏をよく読めば英語で書いてあるからわかるんでしょうけど、そのときは必死でしたから。


香港の市場にて

研修から帰国して一週間以内に会社で試食会をしなければなりません。自分では教わったとおりに作ったはずが、上司に香港で食べたのと違うぞと指摘されます。炒めて、お酒、スープを入れ醤油で色づけ、最後にとろ味をつけて出来上がり。それを日本で作ると味も何もない・・・これはおかしい。ですから教わってきたものを日本でできなかったら、次はそのテーマを持って確認しに修行に行きます。すると、こういうことか!と行った時にわかるんです。香港に行く、帰ってきて疑問が出る、香港に行って確認する・・・これの繰り返しでした。

まず調味料が日本にないんです。香港に大地魚粉(ダーディーユイフン)というヒラメを乾燥させた粉末の調味料があります。これを入れると旨くなるんです。チキンパウダーも鶏粉(ガイフン)といって当時は日本にありませんでした。今はありますけどね。
 そして醤油です。香港でその醤油を使って作るとうまくできるんですけど、同じ醤油を買ってきて日本で作るとうまくいかない。実は親方の1、2番弟子が醤油にものすごくおいしいスープを入れておくんです。最初から醤油にうま味が入ったもので調理するんです。私たちは普通に醤油を使ってやってると思ってましたから、最初は気づきませんでしたね。
 一番わからなかったのがスープです。スープは、そのお店の味を決めてしまいますから専門の人が作ります。もちろん朝早くから行って材料を全部見て、量って、これを何時間煮込んだら漉すんだって教わってきます。でも漉したあとがわからないんです。そのころには別のことが忙しいからそこを手伝っていて、漉した後の仕上げの一番肝心なところを見てなかったんです。それ以降研修へいくときは、自分はここを集中的に見るから、お前はこれこれ・・・というように分担してすべての工程を把握できるようにしました。

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